日本人の心、銭湯で心もカラダも綺麗になろう「日暮里 斉藤湯」
日本の下町文化の象徴である「銭湯」――――。その始まりは、飛鳥時代の仏教伝来までさかのぼる。仏教寺院が貧困層や病人などに、浴室を開放したことから始まったとされている。
銭湯研究の第一人者である町田忍氏によると、我々がよく知るタイプの銭湯が一般的になったのは江戸時代に入ってからだそうだ。400年前のブームが今もなお続いているということになる。日本人の風呂好きの証明とも言えるだろう。
東京都内には約650店舗(※1 2015年4月時点)もの銭湯があり、荒川区には30店舗もの銭湯が営業している。今回は、JR山手線日暮里駅から徒歩3分の場所にある、荒川区の銭湯「日暮里 斉藤湯」を紹介する。
斉藤湯の創業は昭和9年。親子3代、80年以上の歴史を持つ老舗の銭湯で、去年の4月にリニューアルしたばかりだ。銭湯をこよなく愛する常連客だけではなく、家にお風呂を持っているのにも関わらず、たまには大きなお風呂に浸かりたいという客も頻繁に訪れるそうだ。斉藤湯は日本で最後の「三助」が従事していた銭湯としても有名だ。
三助とは「釜炊き(燃料集め)」「湯加減の調整」「浴場の掃除」などの三つの通常業務を助けたことに由来する。三助はそうした仕事の合間に、客から追加料金をもらい、マッサージや背中を流すなどの「流し」と呼ばれる特別サービスも行っていた。
「流し」は1番から3番までいる番頭の中でも、長年の修行を積んだ1番番頭だけに許された仕事だ。残念なことに最後の三助である橘秀雪さんは2013年を最後に勇退している。
リニューアルした斉藤湯には様々なタイプのお風呂がある。毛細血管を拡張し、血行や新陳代謝を促進する効果がある「高濃度炭酸泉」をはじめ、様々な波形の電流でカラダをマッサージする「電気風呂」や、きめ細やかな気泡がマッサージしてくれる「シルキーバス」、などの最新設備も充実している。また、美人の湯と呼ばれる「軟水」を利用しているので、入浴後に肌がスベスベになる美肌効果も期待できる。
斉藤湯の1日の平均来客数は300人で、土日の多い時では400人以上もの人々が訪れる。開店時間は、普通の銭湯よりも少し早い午後2時からとなっている。これは、「早いうちにカラダをさっぱりさせて、一日を健康に過ごしたい」という常連客の要望に応えた結果だ。心身ともにスッキリした常連客の中には、そのまま飲み屋に繰り出す人達もいるそうだ。毎週週末には銭湯寄席を中心としたイベントを定期的に開催し、銭湯以外の楽しみを訪問客に提供している。
斉藤湯の店主である斉藤勝輝さんは銭湯への思いをこう語る。
「銭湯は元々、下町の人たちの生活の一部。わたしたちは近隣の地域の人達に家族全員でお風呂に入りに来てもらえるように、0歳から、90歳代以上のお客様のそれぞれのニーズにあった作りにした。お風呂がない人や、大きなお風呂には入りたい人など、たくさんの人に来て楽しんで欲しい」
2020年のオリンピックに向けて、海外の観光客が銭湯に訪れる機会が年々増えていくだろう。斉藤湯のような「普通公衆浴場」では刺青した人の入浴に特に制限を設けてない。ゆえに刺青をいれた外国観光客でも、気兼ねなく入浴できるだろう。ただし、タオルを湯船につけることは衛生面の観点からマナー違反になるのでご注意を。
東京都内の銭湯は、昭和43年のピークでは2,687件あったが、現在では650件となっている(※2 2015年4月時点)。年々減少している「銭湯」だが、斉藤湯のように従来からある伝統を守りつつも、顧客のニーズを読み取り新しい技術を取り入れて進化し続けている銭湯もあるのだ。日本の古き良き文化である「銭湯」を絶やしてはいけない。
「温故知新」――――― 古きを訪ねて、新しきを知る。パソコンのモニターに向かって考えるより、銭湯の湯船につかってホッと一息ついたほうが、意外と新しいアイデアが湧いてくるかもしれない。この週末は銭湯でリフレッシュ体験してみてはいかがだろうか?
日暮里 斉藤湯
116-0014
荒川区東日暮里6-59-2
営業時間:14:00~23:30金曜日定休
http://www.saito-yu.com/
※1,2 引用元 東京銭湯 「銭湯の数の推移について」より
http://www.1010.or.jp/guide/qa/